米でも「ドルお断り」
主要通貨に対するドル安の流れが強まる中、米国で欧州通貨・ユーロの存在感が高まっている。ニューヨークでは欧州からの観光客目当てにユーロで代金を受け取る店が増え、ドル建て価格の割安感から欧州マネーの不動産投資も活発だ。一方、欧州企業ではドル換算の輸出品の価格が上昇し、競争力の低下による収益悪化でリストラなどの弊害も広がっている。(ロンドン 中村宏之、ニューヨーク 池松洋)
「お支払いはユーロのみ受け取ります」
ニューヨークのマンハッタンにある古美術品店「ビリー骨董(こっとう)品」。店内に入ると、レジでユーロ払いを求める看板が目に留まる。
欧州へ年に3回ほど買い付けに行く店主のビリー・リロイさんは、「ドル安でユーロ建ての仕入れ値が上がり、頭が痛かった。お客の半分は欧州からの観光客なので、この際ユーロで払ってもらうことにした」と話す。ドル安・ユーロ高の流れが強まった昨年秋以降、ニューヨークでは、ビリーさんのように「ユーロ歓迎」を打ち出す土産物店などが目立つようになった。
2007年にニューヨークを訪れた外国人観光客は850万人。ユーロ高で購買力を強めた欧州を中心に前年より約20%増えた。米国の消費はサブプライムローン問題の影響で低迷しており、小売業者は欧州客の財布のヒモを緩めようと懸命だ。
価格が下落する中、マンハッタンでは07年10〜12月期のアパートの価格が「前年より平均で6・4%上昇した」(不動産業者)。
欧州の機関投資家、不動産業者など幅広い層が、オフィスビル、アパートの購入に動いている。大手不動産会社を経営するダイアン・ラミレスさんは「欧州などの外国人客は2割を占め、投資額は10年前の2倍以上に増えた」という。[欧州輸出産業に打撃
欧州輸出産業に打撃
一方、欧州では輸出品のドル換算の価格が上昇し、輸出関連企業の国際競争力が低下するなどの悪影響が広がっている。とりわけ、輸出主導で景気が拡大してきたドイツの痛手は大きい。
自動車大手のBMWは2月下旬、国内外で正社員と臨時雇用の計8100人を削減すると発表した。ユーロ高が原因で、価格競争力が低下し収益が圧迫されている。ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長は「(輸出先の)米市場全体がマイナスの方向を向いており、大衆車分野での影響は深刻」と懸念する。
欧州では経済成長を背景に、ユーロ高批判は影を潜めていた。しかし、1ユーロ=1・6ドルの水準に迫り、景気の先行きが不透明になってきたことで「(ユーロ相場は)望ましくない方向に向かっている」(ユンカー・ルクセンブルク首相)とけん制する声が増えている。
(2008年4月21日 読売新聞)
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